設立趣意書

私たちが生活する沖縄の島々はサンゴ礁が基盤となってできています。台風が常襲する沖縄にとってサンゴ礁は、自然の防波堤としての重要な役割を果たしているだけでなく、熱帯雨林と並ぶ多種多様な生物の宝庫でもあり、私たちに漁業資源や観光資源など様々な恩恵をもたらしてくれます。

かつて沖縄では、島という限られた陸地とサンゴ礁を活用し、環境と調和のとれた半農半漁の生活が営まれていました。人々は多様性に富んだサンゴ礁とそれに続く広大な海に向き合い、海を敬い親しむ風土を古くから継承しながら、ニライ・カナイ信仰とそれにまつわる儀式や浜下りなどの行事にみられる民俗や特色ある芸術、さらには歴史的遺産にいたるまで、沖縄独自の文化を創りあげてきました。しかしながら、その様相は近年になって急激に変化しています。

1972年に本土復帰を果たした沖縄では、米軍基地問題を先送りしたまま「本土並み」を合い言葉に、数次にわたる沖縄振興計画に基づいた諸分野の産業振興策が進められ、都市基盤、医療・福祉、教育等の環境が着実に整備されました。

その中でサンゴ礁は、新たな経済産業基盤として脚光を浴びる観光分野での重要な社会資産となります。しかし一方で、商業メディアに求められる「青い海、白い砂浜」という単調なイメージ広告が繰り返し展開された結果、県民自身も自ら求めた経済発展の影で多様な伝統的価値観を失い、現実感の伴わない画一化されたイメージだけが浸透していきました。このようにして、サンゴ礁の実態を深く知る機会を失ってしまいました。

さらに、私たちのくらし方、いわゆる開発、農業・観光・漁業などの諸産業の活動が、直接間接にサンゴ礁生態系の破壊と疲弊を引き起こしています。永い年月をかけて形成された貴重なサンゴ礁は次々に埋め立てなどにより消失しました。幸いにして残ったサンゴ礁も、止まらない赤土や汚水の流出、オニヒトデの大発生、サンゴの病気に加えて、過剰利用によってサンゴ礁の持つ優れた資源的価値を損ない、その存続が危ぶまれています。

これらに加えて、頻発する白化現象など、地球規模の気候変動による海水温の上昇や海洋酸性化は、サンゴ礁にも大きな影響を及ぼしつつあり、問題はより広域化・複雑化しています。世界的にも貴重な沖縄のサンゴ礁を健全な状態で次世代へ残すために、その保全に取り組むことが急務です。

2004年に沖縄で開催された国際サンゴ礁シンポジウムでの「沖縄宣言」や、 2007年発効の海洋基本法を始めとする国内の法整備など、研究者や国によるサンゴ礁保全への取り組みが始まっています。沖縄においても、地域の自治体や NPOや企業による海岸清掃、オニヒトデ駆除、海の観察会、サンゴ群集再生の試み、観光業・漁業者による海域利用のルール作りなど、さまざまな活動が進められています。こうした活動を効果的に行いより良い結果を導くには、サンゴ礁を取り巻く自然・文化・社会・経済の特性や多様な価値観を十分理解したうえで、それぞれの活動を相互に連携させて持続的に進めていくことがとても大切です。

そのためには、持続可能なサンゴ礁の利用による地域づくりをすすめ、地域住民、漁業者、観光業者、農業者、県内外の企業、教育関係者、研究者、NPO、行政機関など、さまざまな人々を横断的に結びつける組織が必要です。そしてその組織を総合的で持続的に運営してゆくには、異なった立場にある多くの人々が、自由に情報や意見交換を行える場がつくられること、多様な参加と協力が行える仕組みを用意することも必要です。

このような組織を目指してここに「沖縄県サンゴ礁保全推進協議会」を設立します。

  • 平成20年5月18日
  • (仮称)沖縄県サンゴ礁保全・再生推進協議会設立準備会合委員一同
  • 上里幸秀、上田邦太郎、浦崎 晃、岡地 賢、垣花武信、鹿熊信一郎、梶原健次、後藤亜樹、小林靖英、桜井国俊、寺田麗子、
    中野義勝、中谷誠治、中山恭子、西平守孝、平井和也、平田春吉、宮城俊彦、安村茂樹、横井仁志、吉田 稔 (アイウエオ順)

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